ゆうき農園みよし村について

ゆうき農園みよし村について


理事長あいさつ

未来へ続く活気ある農村を目指して

理事長 八木直樹

八木直樹 プロフィール写真

千葉県の最南部にあるここ南房総市は、中山間地域のため山林も多く、傾斜地であったり、平野部の規模が小さいなど、農地の条件も決して恵まれているわけではありません。近年は、耕作を引き継ぐ人がいない農地が急速に増えています。農家の法人化、大規模化が進められているものの、人出不足ために細やかな農地管理をすることが難しくなり、規模拡大も限界を迎えようとしています。このような地域の状況を何とか変えていきたいという思いを共有する者たちが集まり、このたびNPO法人としての活動を進めていくことにしました。

田畑から人がいなくなった農村

私が新規就農者として 27 年前にこの地での歩みを始めたころ、春になると、夫婦でクワとマンノウを持って田んぼで農作業に励む人たちがそこら中にいて、春らしい香りと、野鳥たちのさえずりなどとともににわかに活気づいて、五感で農繁期の到来を感じたものでした。そのころは集落の家々の多くは自家用のお米は自分で植え付け、収穫していたので、秋になるとあたり一面の田んぼに刈り取った稲の「はざ掛け」風景が見られたものです。農業は暮らしとともにあることを、常に感じながら過ごしていました。しかし、そのような農の風景も、今ではすっかり見られなくなり、活気を失いつつあります。

農作業イラスト

海外との貿易摩擦が起きる中で農業の保護は国益と相反するものとされ、農産物の輸入自由化が進められるなどの逆境にさらされた農村から若者たちは都市部へと流れてしまいました。残念なことに、逆境にありながら農村にとどまり農業を続けてきた人たちへの敬意が示されることなく、「高齢化」と他人事のように言われてきました。しかし、食料に不自由することなく他人事で済ませられる時代は、終わりを告げようとしています。

国の予測によると、農業就業人口は 10 年後には半減し、20 年後には 4 分の 1 にまで減る見込みです。そうなると、農村を維持していくことが困難になるばかりでなく、必要な食料生産が行えなくなる恐れもあります。ですから、農業に携わる人をいかに増やしていくかということは、この地域の農村環境を維持していくために必要なだけでなく、食料として農産物を必要とする人たち皆にとっての大事な課題なのです。

有機農業の先駆地だった旧三芳村

それではどのようにしたら農業に携わる人を増やしていくことができるでしょうか。27年前に当時の三芳村で新規就農した私は、有機農業を軸とした取り組みこそが、大事なカギだと考えています。

南房総市三芳地区(旧三芳村)は、1973 年に地元農家のグループが有機農業に取り組み始めたことにより、有機農業の先駆地として全国にその名が知られていた「聖地」でした。有機農業は、50 年以上も前からこの地に根付いているのです。このNPO法人の名を「ゆうき農園みよし村」としたのは、そのような地域の歴史があるからです。

私自身もそのような有機農業の諸先輩方から直接教えを受けた一人で、有機農業の楽しさを感じてきたからこそ、ずっと続けてくることができました。また、有機農業には、食べる人、関わる人を元気にする力があると感じてきました。私が就農したころは「有機農業をやる者は変わり者だ」という眼で見られる時代でしたが、今は有機農業に対して追い風が吹いてきたことを強く感じています。

有機農業が求められる時代に

まず、地球温暖化に対処しなければ私たちの未来は厳しくなるという課題に直面し、世界的に環境と調和した農業への転換が求められるようになりました。日本もそのような世界の動きに沿って、2050 年までに有機農業を全耕地面積の 25%まで拡大する目標を掲げた「みどりの食料システム戦略」に基づいた政策を展開しています。この政策の背景には、新規就農を希望する人の 20~30%が有機農業を志向しているという現状があります(新規就農者の相談窓口である全国農業会議所の調査による)。

はざ掛けイラスト

また、科学技術への過度の依存による食料生産への消費者の懸念を背景に、有機農産物への需要も国内外で急速に高まっていて、流通業者の取扱量が増え続けるとともに、地場産有機農産物の学校給食への導入など市町村の施策も各地で進められています。

このように、有機農業への関心は生産と消費の両面からますます高まってきているのです。ですから、有機農業を軸とした活動を進めていくならば、新規就農を目指す人たちや安心して食べられる食料を求める人たちとの接点がここ南房総で次々に生まれていくことを確信しています。

私たちが目指す地域の未来

耕す人が足りない現状を前に私たちが考えたことは、農家と農家ではない住民との協働によるNPO活動でした。地域の農業の課題は、もはや農家だけでは解決できないほど難しくなっているからです。2025 年春から始まる私たちの活動は、有機農業に関心を持つ人たちに南房総を訪ねていただく機会をつくるとともに、南房総で新規就農者として暮らしを始めたなら応援し、さらにはNPOとしても有機農園を運営して農家でない人たちも農に参加しやすい仕組みをつくってこの地域に有機の農に関わる人を増やしていき、みんなで地域の農業や取り巻く里山の環境を守っていくことを目指しています。

そのことによって、かつての農村のにぎわいも、私たちが生きてゆくのに不可欠でありながら見失われてきた食の価値も取り戻すこともできることでしょう。里山を含めた農村の資源を活かしながら、農業を中心とした持続可能な地域をつくっていくことが、ずっと先に見据える目標です。

そのような地域の未来像を描きながら、私たちは希望を持って有機農業を軸とした様々な取り組みを進めていきます。食べ物につながる農に関心を持つみなさま、健康につながる食べものを探している皆様、自ら耕して農に関わる暮らしを実現したいと考え始めている皆様、ぜひ私たちの活動にご参加ください。また、活動には参加できないけれども活動の趣旨に賛同してくださる皆様には、どうかご支援を賜りますようお願いいたします。

2025 年 2 月



基本方針

  • 土の力と里山の環境を活かして循環する農を実践する。
  • 先人の知恵を継承するとともに、新規就農者を含む生業としての農を支援し、美しい農村の景色を未来につなぐ。
  • 多様な農への関わり方を提示し、この地域で農に関わる人の輪を広げてゆく。
  • 農体験を通し子どもにもおとなにも学びと発見の場を提供する。
  • 一人ひとりが自発的に活動し、自ら楽しむ。
  • 農の楽しさ、収穫と味わう喜びにより心と身体を開放し、笑顔あふれるコミュニティをつくる。
ゆうき農園みよし村イラスト

組織概要・沿革

名称NPO法人ゆうき農園みよし村
理事長八木直樹
所在地千葉県南房総市千代62
設立日2025年2月3日
沿革2024年
  • 03月 任意団体「ゆうき農園みよし村」設立、理念と基本方針を決定
  • 12月 設立総会開催
2025年
  • 01月 千葉県より認証を取得
  • 02月 会員募集・事業開始

事業部

ゆうき農園みよし村は下記事業部で活動を行っています。

有機農業部有機稲作を中心に三芳で培われた技術の伝承とその後継者づくりをめざす講座、見学会、ワークキャンプなどを予定しています。また、有機農への幅広い参加の機会をつくるとともに、会員の自給をめざす「みよし村農園」を運営します。
竹林・里山事業部有機農と密接に関わる、竹林里山保全整備の技術伝承とともに、竹チップ・竹炭づくりと販売、竹材を使ったワークショップなど、地域資源としての活用を予定しています。
農業体験・交流活動部まずは気軽に有機農を楽しみたい方や子どもたちに向けて、農を通して、食べものを育てたり収穫するなどの様々な体験や体感を得られるワークショップを予定しています。
料理・農産加工部各事業部で育てた野菜や米で加工品を作り味わっていただいたり、有機農の副産物である稲わらなどを使った体験会などを予定しています。

定款・入会規約