田んぼに水がまわり始めます 2025年3月19日

水路に水が流れ始めました。

2月、3月、4月は旧三芳村内の各地域で畦焦しや水路掃除、堰からの水路掃除、ポンプの作業などなど様々な田んぼ関係の共同作業が行われます。この時期の土日に個人的な用事など入れてしまうと、共同作業のお知らせが来たときには、「さてさてどうしましょう」になってしまう事になります。共同作業の日程は毎年大体決まっているので、長年野良仕事に携わっていると分かるのですが、就農した当初はそんなこと、さっぱり分からず、困ってしまったことも多々ありました。さらに田んぼ関係の作業以外にも、その地区や組単位(コミュニティー)の集まりも加わり、土日は結構埋まってしまうのです。

さて、現在私は山名地区、海老敷地区、大学口地区、そして今年から下堀地区の田んぼを耕作することになり、それぞれの地区の水回り話(水路やその水系)を少し。

まず山名地区。山名川水系から水を引く水路。水が必要な3月~8月上旬まで、川をせき止めて、地形(高低差)を利用して、水路に水が流れます。全部で多分4カ所あって、江戸時代に掘られた素掘りの隧道もあり、自然の地形を上手く利用した水路です。

山名川水系の花見台取水口の掃除
山名川水系の花見台取水口の掃除

そして山間堰(さんませき)から水を引く水路。普段はこぼれ水が排水路を通り、途中から水路に上がる程度ですが、田んぼ仕事で水が必要な代かきの時期や生育ステージで水が一番必要な出穂期には堰水が落とされ(流され)て、山名の原を潤します。もちろん極端に雨が少ない年は、役員の方が堰水を落として、順番に水を入れてくれる場合もあります。さらに高井ヶ谷ポンプ小屋(正式名称不明)から川の水をポンプアップする経路もあり、すべての田んぼが隅々まで水が行き渡るように工夫されています。

次は海老敷地区。海老敷には海老敷川の上流に位置する広田堰から流れる、国府第一土地改良区の水路があります。この水は本織や明石など海老敷よりも下流部に位置する原を潤します。海老敷の原はもともと海老敷川の水だけで、田んぼの水は賄えていたので、堰は必要としなかったようなのですが、下流部の意向で堰ができたため、この水路の水を自由に使っていいという取り決めがあります。もちろん自由という解釈はお互い様の精神に基づいていることは言うまでもありませんが・・・。一部水路をせき止めて、海老敷の水利組合の水路に水がまわるようになっています。比較的自由な感じで、水が使えるのですが、水路の老朽化が激しい地区でもあります。

海老敷の原の畦焦し
海老敷の原の畦焦し

2月上旬には海老敷第一水利組合の畦焦しという行事があり、カラカラに乾く冬の田んぼの畦に火が付けられ、皆で管理しながら、畦の草を燃やします。

大学口と海老敷の第二水利組合。秋ヶ谷堰という堰から流れる水を、やはり途中で堰き止めて、素掘りの隧道の水路を通って、海老敷の一部と大学口と谷向の田んぼまで、水が流れます。堰水を管理する役員の方がいて、田んぼを見回って水が必要な時を見計らって、堰水を落としてくれます。この堰水の水路は常に水が流れているわけではないので、水が流れる時には連絡があり、そのタイミングで水を自分の田んぼに引くことが出来ます。

海老敷第2の堰 秋ヶ谷堰
海老敷第2の堰 秋ヶ谷堰

大学口地区はこの第2の堰の水の他に、独自に海老敷川からポンプアップすることが出来ます。通常はポンプで水を上げて水路に流しますが、堰水が流れる時は、海老敷の一部と大学口の田んぼすべてに水がまわります。ちなみにポンプは水利組合のもので、使用権利は早い者勝ち。朝一番に行って、誰も使っていなければ使えるというゆるくてちょっと厄介な仕組みでもあります。

今年から私が耕作を始める下堀地区は、全く初めての土地なので、水回り(水路の事)も、全く分からないのです。郷に入っては郷に従うではありませんが、その地域ならではの、決まりごとがあり、そのように決まったのには、それなりの訳があるので、その訳まで分かるようになると、水回りの管理も理解が深まるような気がしています。先人たちが取り決めた決まり事があるからこそ、当たり前のように田んぼに水が引けるのであって、米作りができる。水が豊富にある年は、結構穏やかで水争いも少ないですが、いざ雨不足、水不足になろうものなら、その作り手の本性?ではないけれど、いろいろ素顔が見えてくることも多々あります。

米作りには欠かせない水回りの事。人が少なくなれば、水路という米作りのインフラすら機能しなくなってしまいます。先人から引き継がれた水回り(水路)、多くの人が米作りに少しでも携われる環境を守っていきたいです。

 


 

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